面白さを探求するブログ

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『SPY×FAMILY』のアーニャ人気に見る「子供の可愛さ」という新しい生理的訴求の潮流

視聴者や読者をどうやってつなぎとめるかは常にエンタメの課題。
ストーリーの続きが気になる!と思わせるのは難易度が高いが、生理的欲求へ訴える要素は簡単に取り入れられ効果の再現性も高いから止められない。
例えば際どい衣装のカワイイ女の子やスケベシーンを入れておけば、作品内容に関わらず確実に視聴者の何割かを繋ぎ止められる。
他の作品がやるならうちもやらねば、と軍拡競争化し、気がつけば深夜アニメではヒロインが1話の3分以内に脱がさなければならないという状況にまで発展してしまった。

参考:なぜラノベ原作ヒロインは3分以内に脱ぐのか - 本しゃぶり

 

しかし時は経ち、2000年代2010年代に深夜アニメを見ていた層も今は30代40代。
さすがにもうコテコテの性的要素は食傷気味。むしろノイズにさえなる。

 

そんな彼らに効く次の特効薬となる生理的訴求要素こそ「子供」などの可愛さなのではないか。
ここで言う「可愛さ」とは性的要素を完全に排除したもので、厳密に定義するなら保護欲求を刺激する要素。
だから人間でなくてもカワイイ小動物とかでもいいのかもしれない。

 

ただ、今の日本の社会的背景からして、より強力なのはちょうどアーニャくらいの子供の持つ可愛さなのではないかと思う。
今の日本では子供を持つのはかなり難易度が高い。それ以前に恋愛さえも難易度が高い。
その代わりに、ゲームやSNSなど刺激的な娯楽に溢れているので、独身でもそれなりに楽しい人生を送ることができる。
しかし、それでも生理的欲求だけは無視できない。

 

人間の持つ生理的欲求の1つには子供などの保護を必要とする者に対する保護欲求があるが、現代日本人の多くは子供と接する機会が少なく、確実にこの欲求不満に陥っている。
この受け皿がエンタメ領域に求められないわけがない。

 

似たような光景が過去にもあった。
けいおん』が出て来た時も同じようなことを思った。
仲の良い友だちを作ってワイワイするということが得難いものになったからこそ、コミュニケーションや所属それ自体を目的とする『けいおん』のような作品が歓迎されるようになる。
もしあれが昭和時代にでてきても、この女子高生らはダラダラと何がしたいんだ、って目でしか見られない。

 

話を戻す。
性的要素を完全に排除した「子供の可愛さ」という要素は、性的要素に比べれば刺激の強さは弱いが、流行を作りやすいメリットが2つある。
性的要素はリビングで家族と見ることを難しくするが、「子供の可愛さ」にはそのような忌避感はないので誰とでも安心して見れる。また、性的消費を良く思わない視聴者を不愉快な気分にさせてしまう恐れ、文化圏ごとの年齢レートとタブーへの配慮、などのリスクが「子供の可愛さ」にはほとんどつきまとわない。
2つ目は、「子供の可愛さ」の訴求対象の広さ。これはカワイイ動物系の動画があらゆる年齢層や性別に支持されるのと同じ。

 

ちなみに『けものフレンズ』が一時期大流行したのは、上記の2つのメリットがかなり手伝ったように見える。
親子でも一緒に見れて、誰もがサーバルちゃんなどのキャラクターの可愛さを理解できる。
もちろんこれは大流行の必要条件だったとしても十分条件ではない。