面白さを探求するブログ

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APEXの面白さ

APEXは普段FPSをやらない層にまで広がっている。Twitterの日本のトレンドに入ることもよく見るようになった。

そこでAPEXの面白さとヒット要因について考えたい。

 

バトロワ系の面白さ

APEXの面白さ以前に、まずバトロワ系というジャンル自体がもつ面白さが前提としてある。

バトロワ系の面白さとは、「最後まで生き残れ」というシンプルなルールにより、目的が明確かつシンプルになった点。また、広大なマップ上で多くの敵がランダムに配置された状態からスタートするので、先の予測が難しく、程良い運要素を与え、プレイ内容がパターン化することを防ぐ。

バトロワ系以前のFPS、例えばRainbow Six Siegeなどの固定リスポーン型のFPSと比べると、この差はかなり大きいものだった。

例えばRainbow Six Siegeだと、最初にやることや最初にどの方向へ動くかは、およその最適戦略があるので毎回それを繰り返すだけで、非常にパターン化していた。

敵と遭遇した場合は、基本的には絶対に背を向けてはならず、撃ち合いになる。そうなると結局AIMの勝負が90%くらいを占める。

しかしPUBGやAPEXなどのバトロワ系では必ずしもAIMだけの勝負ではなく、逃げる、隠れる、戦う、助ける、など自由度の高い行動選択肢があり、何が最適かはその時の状況次第で異なる。このような自由度の高い行動選択肢が生まれる土壌には、多対多のバトルであることと、広大なマップであることが必要条件。

 

 

APEXの面白さ

APEXでは更に、それまでのバトロワ系の問題点をいくつも改善した。

ここでは特にPUBGと比較して、何が改善されたかを列挙する。

■ 逆転可能性

PUBGでは一度死んだら復活できないがAPEXでは味方を復活させて形成が大きく逆転することがある。またAPEXではダウン後の体力も多いので、味方がその場で蘇生できる可能性も高い。
 

■ 世界観よりもゲーム性を重視した武器設計

PUBGやRainbow Six Siegeなど多くのFPSゲームではミリタリー世界観を重視する余り、武器の能力も現実世界の武器に沿ったものとする傾向がある。

例えば、PUBG内で登場するピストル系の武器は、マシンガンなどの連射系の武器と比べると非常に非力。もし、近くに降りた敵が連射可能なアサルトライフルでこちらにはピストル系の武器しかない状況ではほぼ勝ち目はない。

しかし、武器の能力が実際のものに近いことで喜ぶのはミリタリーのコアファンだけであり、普通のゲームプレイヤーにとっては重要ではない。

一方でAPEXではどうか。ピストル系だからといって能力的に劣るということはない。例えばウィングマンというハンドガンは6発しか打てず、連射もできないが、一発の攻撃力が高めであることから、上級者向けの武器となっている。

他にも、ハボックという武器は撃ち始めるのに時間がかかるが、そのかわり連射性能と攻撃力が高いという特徴がある。

それぞれの武器の弱点と強みの特徴が豊かで、プレイヤーごとに得意な武器や得意な戦い方が生まれ、AIMが良いか悪いかの単純な世界から脱却することに貢献している。

 

同様の理由で、PUBGやRainbow Six Siegeなど硬派なミリタリー系は、リアルなミリタリー世界観を重視して、ヘッドショットはどんな武器でも一撃みたいな特性を与えたり、体力は少なめに設定されている。この点もAPEXは裏切ってくる。APEXでは体力がFPSゲームの中ではかなり多めの設定で、しかしそのおかげで、戦っている最中にも、やっぱり今は一旦逃げようとか、回復しようとか、そういう選択肢を与えてくれる。

 

■ 観戦のインセンティブ

PUBGでは一度死んでしまった仲間を復活させることはできないので、死んでしまった仲間はすぐにマッチから離脱してしまう。

一方でAPEXでは復活の可能性が高いことと、ランクマッチでは仲間が最終的にどこまで生き残るかによってポイントが大きく変わることから、最後まで生き残った仲間のプレイを観戦することが多い。

観戦する人が多いほど、プレイヤーは緊張感や責任感をもってプレイできる。

 

■ 意思疎通の改善

PUBGと比べて、APEXではボイスチャットをしていない仲間に対しても、様々な情報を共有できる。敵がどこにいるとか、攻撃を仕掛けるとか、そういう意思を伝えやすい。

協力型オンラインゲームのストレスの多くは、仲間との意思疎通の齟齬から生まれることが多い。

 

■ より馴染みやすい世界観やキャラクター

リアルで殺伐としたミリタリーという世界観は日本では馴染みがあまりない。

APEXではアニメ調の声優ボイスを採用したり、外観的にも個性的なキャラクターを採用したり、日本人に馴染みやすいテイストになっている。

 

Twitter上ではAPEXのファンアートや二次創作漫画なんかも見かけることが多く、こういう展開はPUBGやRainbow Six Siegeのキャラクターではありえない。

 

■ ランクシステム

APEXのランクシステムは、プレイヤーの適切なランクをより正確に早く導出する、ということを放棄する代わりに、モチベーション維持に特化している。

他の多くのゲームにおけるランクシステムとは、レートという概念を使って、統計的により適切なランク水準を導き出そうとしている。強い(レートが高い)プレイヤーから勝てばレートが高くなり、逆に弱い(レートが低い)プレイヤーから勝ってもレートはそれほど上がらない。みたいな感じ。こういったシステムを導入しているゲームでは数回対戦するだけでプレイヤーの適切なランクが導出される。

 

しかし、早く正確なランクが分かることは必ずしもプレイヤーの幸福感に結びつくとは限らない。

APEXでは、ランクは上に向かって登り続けるという形式を採用している。最初は全てプレイヤーが一番下のランクからスタートして、より良い成績を残したプレイヤーはより上位のランクに登れる。

この仕組のメリットは、ランクが適正水準まで上昇していく間は相対的に自分が強いように感じられるボーナス的なモチベーション効果にある。自分の経験としても、最初のランク上げは俺つえー状態で気分が良い。

ただし、適正水準まで達するとランクが上がらなくなるのでそのカンフル剤効果はなくなる。

しかしここで話は終わらない。

APEXのランクシステムでは、ランクが一旦上がると降格を保護してくれるため、基本的に下のランクから上のランクに人が供給され続けることになる。
つまり、最初はランク上げに行き詰まったとしても、養分となるプレイヤーが下から湧いてくるので、時間が経てばランクを上げやすくなる。
多くの人はそんなことまで考えないので、自分が成長したからランクが上がったのだと錯覚する。

これは本当によくできている仕組みだと感心する。

 

APEXの問題点

■ 仲間との目的の不一致

バトルフィールドというFPSゲームがあるが、このゲームでは「対戦相手チームに勝ちたい人」と「戦車やヘリなど乗り物の操縦を楽しみたい人」の2つの人種がおり、「対戦相手チームに勝ちたい人」は乗り物で遊んでいる人に協力してもらわないと勝てないので、相当大きなストレスを抱えることになる。

これはゲーム設計者が、単一のゴールを設定してそこに誘導できなかったことに問題がある。

 

現状のAPEXにも似たような問題がある。

最大の問題は、ランクマッチの降格保護(例えばランクが一度ゴールドに上がると、どんなにポイントが下がってもシルバーには下がらないという仕組みのこと)。

降格保護ラインに近い底辺にいる人は、負けることのディスインセンティブがないため、無謀な戦いをすることにためらいがない。そういう人が一緒のチームになると、こちらは真剣にプレイしているのに、味方が適当にプレイするという温度差が生じる。

もちろん、降格保護のおかげで救われているモチベーションもある。

 

根本的な原因はランク帯ごとに設定されたポイントの増減量が、離散的すぎる(不連続的すぎる)ことにある。

ゴールド帯はゴールド1~4まで全て同じ増減の設定で、プラチナ帯に上がるとその増減値が劇的に変わる。つまり難易度が一気に変わりすぎている。一気に難しくなるから、それは当然降格する人が続出するので保護が必要となる。

しかし、最初から増減値の変化を緩やかにしておけばそうはならない。ゴールド1~4の間で少しずつ難しくなるようにしておけば降格保護が必要となるほど急激に難易度が高まる状況は生まれない。

 

 

■ キャラデザ

これはほとんど好みの問題。

ただし日本のゲーム市場を見据えるなら無視できない。

 

自分はAPEXを1000時間以上プレイしているにも関わらず、これまで500円程度しか課金したことがない。その理由は、キャラデザが好みでないから。

別のゲームでは、たった数十時間しかプレイしないゲームでも1万円を超える課金をしてしまうことも多い。

 

日本のゲーム市場で、市場規模という意味で受け入れられているのはウマ娘とかアイマスとか、要はああいうデザインやキャラクター。

APEXは、PUBGなどのリアルなミリタリー世界観からはかなり脱却できたとはいえ、まだまだ濃ゆくて厳つさが強すぎ、日本人に最適なデザインとも言えない。

もし、日本人に特化したキャラデザであれば、その差はビジネス的には極めて大きい。

今のゲーム内課金はほとんどああいったキャラクターのデザインに対して行われていると言ってもいいのだから。